手書きを みつめる 探る
JSPS21K02563基盤研究C「『Penはkeywordよりも強し』なのか」 (代表:千々岩)の研究期間を終え、世界は、ますます伝統的な手書きからデジタル機器に移行していて、そのことの人間の脳への影響を調査することは不可欠であるという認識で収束されつつあることを知りました。
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私たち研究チームの関心は、読み書きのデジタル化が進行することの意味を検討することにあります。具体的には、ノートを取るときや作文を書くときなど、どのような状況でどのようなModalityでどのような身体性を持ち込むことが最も学習効果が高いのかなどです。
もとよりテクノロジーと対立するつもりなどなく、手書き(とデジタルツール)が認知や学習に及ぼす影響という視点を今後も持ち続けていくべきであること、殊に日本語に固有な現象や、読みとの関連に焦点化していっそう追跡をしていくべきであることを再確認しました。
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研究分担者の前原(長崎大学准教授)は、長崎県教育委員会と共同した調査(長崎県「学びの活性化」プロジェクト 2023.2実施)において、家庭学習とデジタルツールとの関係について、本研究課題に対して非常に示唆に富む結果を発表しています。詳しくは、こちらから参照
また、本研究期間の最終末に、子どものスクリーンタイムが世界一長いノルウエーの研究機関(ノルウエー科学技術大学心理学科発達神経科学研究室)発表した研究成果(全文は、こちらから参照)において、前原と同趣旨の見解が述べられています。
Even though maintaining handwriting practice in school is crucial, it
is also important to keep up in the ever-developing digital world. Children
should receive handwriting training at school to learn to write by hand
successfully, and, at the same time learn to use a keyboard, depending
on the task at hand. The present study shows that the neural connectivity
patterns underlying handwriting and typewriting are distinctly different.
Hence, being aware of when to write by hand or use a digital device is
crucial, whether it is to take lecture notes to learn new concepts or to
write longer essays.
学校で手書きの練習を続けることは非常に重要だが、発展し続けるデジタルの世界で遅れを取らないようにすることも重要だ。子どもたちは学校で手書きの訓練を受け、手書きでうまく書けるようになると同時に、目の前の課題に応じてキーボードの使い方を学ぶべきである。本研究は、手書きとタイプライティングの根底にある神経接続パタンが明らかにことなることを示している。したがって、新しい概念を学ぶための講義ノートを取るときであれ、長いエッセイを書くときであれ、手書きとデジタル機器の使い分けを意識することは極めて重要である。
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今後とも、御意見や御感想など、お寄せくださいますようお願いいたします。
書室代表:鈴 木 慶 子 [2024.3記]
研究 研究発表〔手書き関連〕 □「書字力の発達に関する調査研究 -小学校4年生の視写力に着眼して-」 □「Writing Modalityと成果との関係に関する調査研究(2)」 □「Writing Modalityと成果との関係に関する調査研究」 |
随想 □万年筆が持っていた意味/万年筆の生活誌ー筆記の近代ー □感じるがままに、思いつくままに、□石盤、石筆が語る明治の学習 |
寄稿 □11歳の少年に届けられた漱石の「直筆」 □作ったよ。 よびのしたぎ |
抜粋 □「自分の中で生きて残るように覚え込む」をするしかないなと思って、 □1枚について 少なくとも 4・5枚は無駄をする。 □生まれつきぶきっちょの私は字を書くのが苦手だ |
活動・イベント □育シリーズ第6弾「書育・音育・植育」 |
ドイツ紀行2015 □ハイデルベルク大学 学生牢の落書きーこれが、書かずにいられるかー □デパ地下の学校袋(シュールテューテ Schultüts) □「ペンケース」かな?? □学童用万年筆 -熾烈な競争- □左利き用 □初めての鉛筆 -どれを選ぶか- □タブレットペンでのサイン |
修正・更新日:2021/4/22