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「手書き」に関するHPです。研究から随想、エピソードまで…。

「PenはKeyboardよりも強し」なのか

       令和3(2021)~令和5(2023)年度科学研究費助成事業 JSPS21K02563基盤研究(C)

 研究代表:千々岩弘一(鹿児島国際大学教授)
 研究分担:鈴木慶子(長崎大学教授)、劉卿美(長崎大学教授)、前原由喜夫(長崎大学准教授)、長岡由記(滋賀大学准教授)
      松﨑泰(東北大学助教)

   はじめに
  1 研究の目的
  2 研究体制
  3 研究活動の実際
  4 調査報告
   おわりに
 ※本稿は、千々岩弘一ら著「Writing Modalityの差異が読みに与える影響に関する調査研究」
  (『九州国語教育学会紀要』Vol.13に収載予定)に加筆修正を加えている。

はじめに

(1)問題意識
 社会におけるデジタルツールの活用は、「マスト」となっており、今後も技術革新は続き生活様式及び社会構造自体の変革を引き起こすに違いない。
 しかし、ビル・ゲイツもスティーブ・ジョブスも、自分の子どもにはデジタルツールを持たせず使用を制限していたことは有名な話である。ここには、人間の発達過程のある時期には、デジタルツールの使用が脳の発達をはじめ様々な人間的能力の発達を阻害する可能性が示唆されている。たとえば、デジタル教育先進国であるノルウェーのNTNUからは、脳への影響を調査する研究報告が発表されている。
 また、身近にいる学生たちの実態として、Writing Modality(手書き、キーボード入力、フリック入力)によって学生のレポートに形式的にも内容的にも変容があることに気づく。私たちは、この変容に関して、PCやSNSなどのデジタルツールの使用と関係があるのではないかと仮説し、研究活動を推進してきた。
 このような仮説は、手書きを軸とする学習活動とデジタルツールを活用した学習活動による能力の発達の差異を明らかにする必要性を招来した。同時に、「GIGAスクール構想」をはじめ学校教育におけるICT機器活用(教育の情報化)が国家的政策となっている中で、学習活動のどの部分に手書きを軸とする学習活動を残し、どの部分にICT機器を活用した方がよいのかといった、両者の活用バランスに、エビデンスをもった提言をなす必要も、課題意識として生まれてきた。

(2)これまでの研究活動
 千々岩と鈴木は、2000年以降、それぞれの立場で、この問題意識に導かれ、調査・実験を行ってきた。しかし、着眼点の曖昧さや研究手法の未熟さから、これらの問題意識に対する実証的なエビデンスを得ることができずにいた。
 次いで、「世界標準のLiteracy育成プログラム開発のための基礎研究-時間・身体・過程-」(JSPS科研費 JP18K02646、2018年度~2020年度)では、新たな国語教育・認知心理学・外国語教育の研究者を同人に迎え、チームとして、これまでの手書きを軸とする学習活動とデジタルツールを活用した学習活動がどのように学習者の能力の発達に影響を及ぼすのかを追究しようと試みた。しかしながら、「書き」の成果(作文、ノートテイク、メモなど)自体の評価が極めて複雑であることから、初期の目的を達成するには困難を極めた。
 ただ、今後の教育現場でもデジタルツールが多用される状況の中で、学習者の発達に係わるデジタルツールの適切な使用のあり方を実証的に追究していきたいという課題意識は強く、ここ10年余りの間に「読み」における印刷本とデジタル本との差異に関する研究成果を中心にデジタル先進国の研究成果や国内外の研究者から発信された情報・研究成果に学びながら、さらなる実証的なエビデンスを得られるような研究活動の必要性は実感していた。

(3)本科研研究課題の設定
 そこで、先の科研成果を踏まえつつ、学習活動における手書きとデジタルツールによる書記活動の差異が及ぼす影響をより科学的に追究しようと、新たに脳科学の研究者を同人に迎え、本研究課題「『PenはKeyboardよりも強し』なのか」(JSPS科研費JP21K02563、2021年度~2023年度)を設定した。
 コロナ禍は、日本のICT教育の遅れを露呈させた。そのため、日本の世論は、1人PC1台並びに安定したネット環境(家庭、学校、社会)の実現に向かって急速に傾いていっている。 我々は、その実現と併行させて、デジタル先進国での研究を踏まえ、少なくとも小学生、中学生及び大学生におけるデジタルツールを使用する教育が認知能力に与える影響を精査する必要があると考えている。究極的には、どのような場合にデジタルツールは有効性が高く、どのような場合にどのような問題点があるのかを見極めていきたいとも考えている。
 読み書きとテクノロジーとの関係に関する研究では、「読み」に関する研究が質量ともに先導している。Pablo Delgadoらは、同等のテキストによって印刷本とデジタル本(オフライン状態)での読解力に関する比較(2000~2017年)を行い、印刷本の利点を明らかにしている [2018]。テクノロジーが読みをどのよう変えているかを研究しているアメリカの言語学者 Naomi S.Baronは、その著書『Words Onscreen』[2015]で、e-Readingの多くの利点を挙げつつ、デジタルツールで読むことはマルチタスクを惹起しやすく緻密に読むことを苦痛にさせると指摘している。研究分担者の松﨑泰は、仙台市の小中学生を対象にした縦断的な調査(質問紙+学力テスト+脳活動)に基づいて、インスタントメッセージツールによるマルチタスクが学力に悪影響を及ぼしていることを著書として発表した[2018]。「書き」を正面から取り上げたものとしては、ノルウェーのAnne Mangenが推進するプロジェクトDigiHandがある。 同国の教育課程では、手書きによる読み書き指導は必修でなく、必修はデジタルツールを使用することである。そこで、Mangenらは、1年次にデジタルで読み書きを学習した児童と、1年次に手書きで読み書きを学習した児童との学習成果の差異並びに教師の指導の差異を観察中という。別に先頃発表されたNTNU(ノルウエー科学技術大学)の研究では、平均11.83歳 と平均23.58歳を対象にして、手書きとtypingにおける脳活動を追跡記録している。その結果に基づき、研究代表者のAndrey L.H.van der Meerは、ニューズ・ウィーク社の取材に対して、子どもたちが最低限の手書き学習を受けられるよう国がガイドラインを整備する必要があるとコメントしている[2020]。
 以上をふまえると、本「研究課題」は、日本語使用者を対象にして、Writing Modalityによる「書き」の成果(アウトプット)の差異に関して、本格的な追究に乗り出していこうとするものであるといえる。



1 研究の目的

 具体的な研究活動を展開するにあたっては、以下の3点を達成することによって、日本のデジタル教育改革に資する知見を得たいと考えた。
 ① 小学校低学年の教育課程において手書きの必要性を改めて認識しつつあるノルウェー並びに手書きをやめた
   フィンランドの動向を調査する。
 ② 日本の小学生、中学生及び大学生のデジタル使用歴並びに現習慣と認知能力及び脳活動との関係を調査する。
   いわゆるデジタルネイティブとそうでない者との比較観察を行う。
 ③ 前項①②を踏まえて、自身の手で書く力とデジタルツールで書く力のそれぞれを育み、 適宜、切り替えることが
   できる力を育成するための
 課題を析出し、次の調査を構想する。



2 研究体制





3 研究活動の実際

(1)[2021(令和3)年度]
第1回会議(2021年5月23日、ZOOM)
本年度の研究計画の策定(KHコーダーによる文章評価に関する研修会の実施。「創造性」に関する先行研究の収集。2022年度実施予定のノルウェーにおけるDigiHandプロジェクトに関する情報集。)

第2回会議(2021年11月23日、ZOOM)
講演及び意見交換
京都大学医学系の研究者(大塚貞男助教・村井俊哉教授)に、漢字の手書き習得と文章作成能力との関係性について、脳科学的な視点からの研究成果を踏まえた講演をいただき、それを踏まえて研究同人との意見交換を行った。

第3回会議(2022年3月2日、ZOOM)
研究発表と質疑応答
研究分担者松﨑泰氏(東北大学)から、国語学力と生活習慣・読書習慣との関係に関する脳科学的研究成果に関する報告を行ってもらい、その研究内容から本研究のあり方について研究同人で意見交換を行った。

(2)[2022(令和4)年度]
第1回会議(2022年11月13日、対面&ZOOM)
会場;東北大学加齢医学研究所スマートエイジング棟2階のセミナールーム
内容:日本国内の学校教育にICT機器の導入が推進される中で、タブレットを積極的に活用しキーボード入力・フリック入力によって「ひらがな」を書記させている指導者と手書き学習の必要性を重視して引き続き手書きによる「ひらがな」学習を推進していこうとする指導者の実態が報告され、この点に関する教師の意識調査の実施を検討することが確認された。同時に、キーボード入力・フリック入力で「ひらがな」を書記させている小学校1・2年生の中には、書記した文章を音読する際に、ひとまとまりの「ことば」として音読するのではなく一音ずつを辿って読む「たどり読み」や一音ずつを拾って読む「ひろい読み」をする児童がいるという報告もなされ、この原因が手書きで発達するはずの図形認識力や身体運動能力が鍛えられにくいことからくる図形的再認能力の未発達に由来する可能性が指摘され、この点に関する脳科学的な視点からの調査研究を実施する必要性が確認された。

3)[2023(令和5)年度]
第1回会議(2023年4月29日、ZOOM)(土)14:00~15:30
方法:Zoomによるオンライン会議(URLは、鈴木先生から送信。)
打ち合わせ内容(案):
 1 令和5年度の調査研究の内容とスケジュールについて
  (1)長岡先生・松崎先生の御提案を中心とした調査・研究の内容とスケジュール
  (2)北欧への訪問調査・研究の内容とスケジュール
  (3)その他
 2 研究成果のまとめ方及び公表の方法について
 3 第3期の科研申請について
 4 その他

調査1 大学生を対象とした読み書きに関する調査 
調査期日;2023年7月25日~28日 
調査会場;東北大学加齢医学研究所
調査目的;大学生は、手書きした場合と、キーボード入力した場合とでは、どの後の音読スピードは異なるのか。
     調査背景とメカニズム;
 ① タイピングよりも手書き経験によって、幼児の文字の読みに関わる脳活動(特に字形の認知に関わる領域)が
   変わることがわかっている(Jameset al., 2012)。
 ② 字形についての知識は、読みや書き双方に関わる。書くことで文の字形についての認識が高まると、読む際の
   字形の認知にもよい影響がある。
    調査の詳細;ボルダ大学でのセミナーで松﨑氏が口頭発表。下記記事を参照のこと。

調査2 ノルウエー・ボルダ大学での研究交流と現地調査
調査期日;2023年8月29日~30日
(1)8月29日の研究交流
   08:30-09:30  モーニングコヒーと自己紹介
   10:00-12:00 研究セミナー
          1. 松﨑泰助教「大学生を対象とした文章を手書きした場合とキーボード入力した場合で、
            その後の音読スピードは変わるか」
          2. Wenke Mork Rogne教授&Siv M. Gamlem教授「DigilHandプロジェクトの概要」
          3. Eivor Finset Spilling准教授「小学1年生における手書きとキーボードの比較:どちらの
            様式が作文のパフォーマンスと学習を最もよくサポートするか」
          4. Liv Kristin Øvereng(博士課程在籍)「小学校1年生の典型的な1日において、タブレットを
            使用した授業と使用しなかった授業における教師と児童の相互作用の質をマッピングする」
          5. Pernille Fiskerstrand准教授「小学校における自己調整的作文を支援するための指導的
            フィードバック」
 
   12.00-13.00 昼食会(教育学部長主催、人文学部学部長、言語文学研究所所長同席)
   13.00-14.00 振り返りと意見交換
   14.00-15.00 写真撮影、キャンパス見学(ガイド付き、ウオーキングツアー: Arne Humberset 国際事務局長).

(2)8月30日の研究交流
   08.30-09.00 Øyra Skule(小学校)訪問前事前ブリーフィング
   09.00-13.00 Øyra Skule訪問、Silje Vilhelmsen先生の学級(2年生)の授業(国語、算数、理科)参観。
   13.00-14.30 Vilhelmsen先生を囲んで参観後協議
          ボルダ大学新聞からの取材



4 調査報告

Writing Modalityの差異が読みに与える影響に関する調査研究

  千々岩弘一(研究代表:鹿児島国際大学)・鈴木慶子(長崎大学)・劉卿美(同)・前原由喜夫(同)・
  長岡由記(滋賀大学)・松﨑泰(東北大学)

1  本論稿の研究上の背景
(1)背景となる研究課題意識
 社会におけるデジタルツールの活用は、「マスト」となっており、今後も技術革新は続き生活様式及び社会構造自体の変革を引き起こすに違いない。
 しかし、ビル・ゲイツもスティーブ・ジョブスも、自分の子どもにはデジタルツールを持たせず使用を制限していたことは有名な話である。ここには、人間の発達過程のある時期には、デジタルツールの使用が脳の発達をはじめ様々な人間的能力の発達を阻害する可能性が示唆されている。たとえば、デジタル教育先進国であるノルウェーのNTNUからは、脳への影響を調査する研究報告が発表されている。
 また、身近にいる学生たちの実態として、Writing Modality(手書き、キーボード入力、フリック入力)によって学生のレポートに形式的にも内容的にも変容があることに気づく。私たちは、この変容に関して、PCやSNSなどのデジタルツールの使用と関係があるのではないかと仮説し、研究活動を推進してきた。
 このような仮説は、手書きを軸とする学習活動とデジタルツールを活用した学習活動による能力の発達の差異を明らかにする必要性を招来した。同時に、「GIGAスクール構想」をはじめ学校教育におけるICT機器活用(教育の情報化)が国家的政策となっている中で、学習活動のどの部分に手書きを軸とする学習活動を残し、どの部分にICT機器を活用した方がよいのかといった、両者の活用バランスに、エビデンスをもった提言をなす必要も、課題意識として生まれてきた。

(2)これまでの研究活動
 鈴木や千々岩は、それぞれの立場で、この問題意識に導かれ、調査・実験を行ってきた。しかし、着眼点の曖昧さや研究手法の未熟さから、これらの問題意識に対する実証的なエビデンスを得ることができずにいた。
[1]書字行為と言語能力及び言語活用能力との相関性に関する研究を進めるための基礎的研究<2001年度>」
   (代表:鈴木慶子 / 分担:久米公、安河内義己、白石壽久、小原達朗、仲真紀子、宮下一博、千々岩弘一)
[2]人間の高次脳機能を育む手書き活動に関する調査研究<2005年度>」(代表:鈴木慶子 / 分担:久米公、
   浜本純逸、大内善一、川島隆太、林朋美、生田奈穂)
[3]IT機器活用による国語学力の変容」に関する調査研究1―IT機器の活用にともなう文章表現力・文章
   表現過程の変容に関する調査研究―」
   (「(財)中央教育研究所調査研究報告書(平成17年度)私家版」、2006年12月20日、千々岩弘一)
[4]学習基盤の形成を促進する書字力育成プログラムの開発<2011年度~2015年度>」(代表:鈴木慶子 /
   分担:千々岩弘一、田中智生、小野瀬雅人、吉村宰、平瀬正賢)
 しかし、ここ10年余りの間に、「読み」における印刷本とデジタル本との差異に関する研究成果を中心に、デジタル先進国の研究成果や国内外の研究者からの情報・研究成果が発信されてきた。代表的なものに以下のような研究成果がある。
[1]米国の研究 :大学生(プリンストン大学、カルフォルニア大学)を対象にした研究[Muller&
   Oppenheimer,2014]によれば、講義を聴講する際に、認知的応用問題において、PCでノートを取った
   学生は、手書きでノートを取った学生よりも、成績が良くなかった(3実験中3結果)。事実再生問題に
   おいては、3実験中2結果でPCでも手書きでもほぼ同様の成績となり、3実験中1結果で手書き群の成績が
   良かった。
   The pen is mightier than the keyboard: Advantages of longhand over laptop note taking.
   Mueller, P. M. & Oppenheimer, D. M. (2014),Psychological Science, 25 (6), 1159-1168.
[2]欧州の研究 :フィンランドの児童生徒を対象とした研究[Frangou et al.,2019]では、Writing
   Modalityとストーリー記憶との関係について調べている。児童生徒(10~11歳及 び16歳)が、読み上げら
   れた3つのストーリーを、手書き、キーボード入力、タッチスクリーン入力で書き取り、1週間後、どれ
   ぐらい記憶しているかのテストを受けた。結果、11歳と16歳の参加者は手書きした方の成績が良かった。
   ただし、10歳の参加者では、Writing Modalityによる成績の差は見られなかった。論者はその理由として、
   デジタル使用経験が影響しているのではないかと推測している。
   今後は、現代社会で期待されている  Literacy能力と新技術への適応性について、より多くの研究が必要だ
   と提言している。
   The effect of writing modality on recollection in children and adolescents./ RESEARCH IN
   LEARNING TECHNOLOGY(2019)/Satu-Maarit Frangoua, Jan Wikgrenb, Sara Sintonenc, Leila
    Kairaluomad and Pekka Vasarie
[3]日本の研究 :川島は、手紙を手書きで書いた場合は前頭前野が活発に働くのにPCや携帯電話で書かせても
   前頭前野はまったく働かないことに加え、無意味な文字列では、両者とも前頭前野が働かないという研究を
   発表している[2018]。
   『スマホが学力を破壊する』,川島隆太著,集英社新書,2018.
 このような「読み」を中心とした世界的な関心の高まりの中で、チームを組んだ我々は、「書き」を研究の中心に焦点化しようと試みた。そこで、「世界標準のLiteracy育成プログラム開発のための基礎研究-時間・身体・過程-」(JSPS科研費 JP18K02646、2018年度~2020年度)という研究課題を設定し、新たに国語教育・認知心理学・外国語教育の研究者を同人に迎え、チームとして、これまでの手書きを軸とする学習活動とデジタルツールを活用した学習活動がどのように学習者の能力の発達に影響を及ぼすのかを追究しようと試みた。しかしながら、「書き」の成果(作文、ノートテイク、メモなど)自体の評価が極めて複雑であることから、初期の目的を達成するには困難を極めた。
 この段階での一応の成果としては、「書き」の質を左右する連想力とWriting Modalityとの関係に関する調査研究結果を報告している。
JSPS科研費 JP18K02646の「世界 標準のLiteracy育成プログラム開発のための基礎研究-時間・身体・過程-」の研究成果は、以下の論考を参照していただければありがたい。(⇒長崎大学鈴木慶子のホームページ「書室」に所収。)
[1]writing Modality と成果との関係に関する調査研究」
   (2020年 9 月、全国大学書写書道教育学会第35回大会で誌上発表)
   本研究では、大学生(長崎大学)を対象として、Writing Modality使用状況と認知(推理・推論、言語処理)
   の関係を調査した。なお、群の言語能力が同等になるように統制を行っている。
   その結果、以下4点がわかった。
  ①レポート執筆時にスマホをよく使う者ほど、推理・推論能力が低い。
  ②レポート執筆時 の取材で写メを使う者ほど、PCでの執筆を好む。
  ③レポート執筆時の推敲を手書きで行う者ほど、手書きでの執筆を好む。
  ④PCでの執筆を好む者ほど、推理・推論能力が低い。
   以上の結果から、欧米語並びに日本語においても、Writing Modalityは、認知(記憶、推理・推論、言語処
  理)力に影響を与えている可能性があるといえる。
   日本語ではデジタルツール を使用する場合、多くはローマ字入力及びローマ字漢字入力を伴うので、欧米語
  におけるデジタル ツールの使用に比して、認知「記憶、推理・推論、言語処理」能力にかなり大きな影響をも
  たらすだろうと推測している。
[2]Writing Modality と成果との関係に関する調査研究[2]-連想を記述した語の分析を中心に-
   高次な認知活動(推論、アイディア産出、文章産出など)に関して、手書きがよい影響を及ぼすかどうかはほ
  とんど検討されていない状況の中で、先の「Writing Modality と成果との関係に関する調査研究」においては
  連想課題における手書き群とPC 群の連想個数の差についても調査を行った。
  解析の結果、下記がわかった。
   ⦁ 連想の合計数では、手書き群(21.00 語)、PC 群(16.33 個)であり、両群に有意な差はない。
   ⦁ 1語で記述された連想の個数は、手書き群(17.33 個)、PC 群(8.28 個)であり、手書き群のほうが有意に
    多い。
   ⦁ 複数語で記述された連想の個数は、手書き群(3.31 個)、PC 群(8.06 個)であり、両群に有意な差はない。
    また、参加者が記述した語、語句(含;短文)を、カテゴリで分類し、質的な差異を追究した。
    残念ながら、質的な面で有意な差を見出すことはできなかった。

(3)本論稿に直結する「研究課題」の設定
 先の研究活動を踏まえつつ、学習活動における手書きとデジタルツールによる書記活動の差異が及ぼす影響をより科学的に追究しようと、新たに脳科学の研究者を同人に迎え、「『PenはKeyboardよりも強し』なのか」(JSPS科研費JP21K02563、2021年度~2023年度)という「研究課題」を設定した。
 コロナ禍は、日本のICT教育の遅れを露呈させた。そのため、日本の世論は、1人PC1台並びに安定したネット環境(家庭、学校、社会)の実現に向かって急速に傾いていっている。 我々は、その実現と併行させて、デジタル先進国での研究を踏まえ、少なくとも小学生、中学生及び大学生におけるデジタルツールを使用する教育が認知能力に与える影響を精査する必要があると考えている。究極的には、どのような場合にデジタルツールは有効性が高く、どのような場合にどのような問題点があるのかを見極めていきたいと考えている。
 読み書きとテクノロジーとの関係に関する研究では、「読み」に関する研究が質量ともに 先導している。Pablo Delgadoらは、同等のテキストによって印刷本とデジタル本(オフライン状態)での読解力に関する比較(2000~2017年)を行い、印刷本の利点を明らかにしている [2018]。テクノロジーが読みをどのよう変えているかを研究しているアメリカの言語学者 Naomi S.Baronは、その著書『Words Onscreen』[2015]で、e-Readingの多くの利点を挙げつつ、デジタルツールで読むことはマルチタスクを惹起しやすく緻密に読むことを苦痛にさせると指摘している。研究分担者の松﨑泰は、仙台市の小中学生を対象にした縦断的な調査(質問紙+学力テスト+脳活動)に基づいて、インスタントメッセージツールによるマルチタスクが学力に悪影響を及ぼしていることを著書として発表した[2018]。「書き」を正面から取り上げたものとしては、ノルウェーのAnne Mangenが推進するプロジェクトDigiHandがある。 同国の教育課程では、手書きによる読み書き指導は必修でなく、必修はデジタルツールを使用することである。そこで、Mangenらは、1年次にデジタルで読み書きを学習した児童と、1年次に手書きで読み書きを学習した児童との学習成果の差異並びに教師の指導の差異を観察中という。別に先頃発表されたNTNU(ノルウエー科学技術大学)の研究では、平均11.83歳 と平均23.58歳を対象にして、手書きとtypingにおける脳活動を追跡記録している。その結果に基づき、研究代表者のAndrey L.H.van der Meerは、ニューズ・ウィーク社の取材に対して、子どもたちが最低限の手書き学習を受けられるよう国がガイドラインを整備する必要があるとコメントしている[2020]。
 以上をふまえると、本論稿の土台となる前述した「研究課題」は、日本語使用者を対象にして、Writing Modalityによる「書き」の成果(アウトプット)の差異に関して、本格的な追究に乗り出していことするものであるといえる。

2 「研究課題」追究における本論稿の位置づけ
(1)「研究課題」に基づく研究構想
  以下の3点を達成することによって、日本のデジタル教育改革に資する知見を得たいと考えた。
  ① 小学校低学年の教育課程において手書きの必要性を改めて認識しつつあるノルウェー並びに手書きをやめた
    フィンランドの動向を調査する。
  ② 日本の小学生、中学生及び大学生のデジタル使用歴並びに現習慣と認知能力及び脳活動との関係を調査する。
    いわゆるデジタルネイティブとそうでない者との比較観察を行う。
  ③ 前項①②を踏まえて、自身の手で書く力とデジタルツールで書く力のそれぞれを育み、 適宜、切り替えること
    ができる力を育成するための課題を析出し、次の調査を構想する。

(2)「研究課題」・「研究構想」における「本論稿の研究主題」の位置づけ
 本論稿の「研究主題」は、「研究課題に基づく研究構想」の「② 日本の小学生、中学生及び大学生のデジタル使用歴並びに現習慣と認知能力及び脳活動との関係を調査する。いわゆるデジタルネイティブとそうでない者との比較観察を行う。」に関連するものとして「Writing Modalityの差異が読みに与える影響に関する調査研究」に焦点化した。
 デジタルと書くこととの関係を体系的に取り上げるものは非常に少数であり、読むこととの関連で触れている場合が多い。その代表例として、 『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳-「深い読み」ができるバイリテラシー脳を育てる』 [Wolf著・大田訳2020]がある。印刷本で培われる読みの能力とデジタルで培われる読みの能力とは異なり、「デジタルは注意を散らし、予想力・記憶力を低下させ、外部の知識ベースに頼りがちになるため、溢れる情報を分析・批判する能力が育ちにくい」、だからこそ、「適切な時期に、適切な教育を適切なデジタルツールによって進めることが望まれる」 (p292~293)とある。書きの力は、一般的に読みの力に連動するので、「そのような読み方をする学生は最終的に、十分に練ることも、説得力のある裏付けもせずに書くことになり、 読むときも書くときも、概念の上澄みだけをすくう」(p128)と指摘している。 設定した「研究課題」の追究を通して、デジタルツールで書くことのリスクを明らかにすることができれば、デジタル途上国の日本において、ICT教育の遅れを強み(読み書き力並びにそれを基盤とした力を低下させずに、デジタルリテラシーを育成する)に転換していくことを可能とする研究になると考えている。
 その「研究課題」追究の基礎的段階として、「本論稿の研究主題」及び「予備実験」の「調査研究課題」は設定されている。すなわち、書く(書記する)手段を変えることが読みの力(「予備実験」においては「音読の速度」)に影響を与えるのかを実証的に明らかにするための見通しを得るために、「手書きすることは電子端末上での文字入力よりも読みに良い影響があるのか。」という「調査研究課題」を設定し、実験調査を行ったものである。
 「研究課題」や「研究主題」を実証的に明らかにするための調査研究としては、まさに第一歩に過ぎないが、試行錯誤の中での第一歩である。以下に本論稿の内実である「予備実験」の概要・研究成果・研究課題について記述する。

3 本論稿(「予備実験」)の内実
(1)調査研究課題
   手書きすることは電子端末上での文字入力よりも読みに良い影響があるのか。
(2)目的
   大学生を対象に、「文章を手書きした場合」と「キーボード入力した場合」とで、その後の音読スピードが変わ
   るかを検討する。

(3)背景メカニズムに関する仮説
   ⦁ タイプライティングよりも手書き経験によって、幼児の文字の読みに関わる脳活動(特に字形の認知に関わる
    領域)が変わることがわかっている(James et al., 2012)。
   ⦁ 字形についての知識は、読みや書き双方に関わる。書くことで文の字形についての認識が高まると、読む際の
    字形の認知にもよい影響がある。

(4)実験の方法
   
     
(5)被験者の属性―被験者群(「手書き群」と「キーボード入力群」)を統制(等質化)するためー   


(6)検査状況(空間設営)


  *PCの「学習機能」はシャットしたうえで、ワードを活用。

(7)「文章刺激」の要件
   ⦁ 検査素材として、三つの文章を準備。
   ⦁ 大学生向け検査から1種、小学2年生の教科書から2種の3種類。それぞれ170字程度。
   ⦁ 対象が大学生であること、大学生むけの文章が横書きであることからすべて横書きに変更し、「手書き/入力」
    も横書きで行った。
   ⦁ 被験者ごとに三つの文章の実施順を入れかえて実施。ただし、小学生向け文の二つは続けて行った。
   ⦁ 大学生向け文章 
     ※高橋・三谷(2022) RaWF読字・書字課題のもの(全175字)。
   ⦁ 小学生向け文章(1)
     ※小学校2年生用文章(全159字)。
   ⦁ 小学生向け文章(2)
     ※小学校2年生用文章(全176字)。

(8)事後の「文章の印象」に関する評価(質問紙調査)
  以下の4種の質問を、3種の文章それぞれについて実施。
  (1 読み難度) 最初に読んだとき、この文章はどのくらい読むのが難しかったですか。
  (2 書き/入力難度) この文章はどのくらい書くのが難しかった/入力するのが難しかったですか。
  (3 心像性)この文章に書かれた場面を想像するのはどのくらい難しかったですか。
  (4 視覚的複雑さ)この文章は、どのくらい文字が視覚的に複雑だと思いますか。
 ※いずれも1点から10点で、困難な度合いが高いほど高く点をつけるよう教示した。

(9)「手書き/キーボード入力」の所要時間と「音読速度」の調査結果

 ※なお、「―」は、個人差の範囲を示している。
 ※「早い」は「速い」の誤り。(以下、同様。)







(10)調査結果の分析・考察―入力時間、音読時間の結果の要約―
 ⦁ 一貫して入力速度はキーボード入力が手書きよりも速く、音読速度は手書きがキーボード入力より速い。
 ⦁ 効果量(標準化された差の大きさの指標)では、入力速度で0.19から0.76と小から大程度の差がうかがわれた。
 ⦁ 同じく音読速度でも-0.36から-0.51と小から中程度の差があることがうかがわれた。
 ⦁ 結果の一貫性、効果量から、「キーボード入力した文章よりも手書きをした文章で読み速度があがる」という仮説
  に沿った結果が得られたといえる。
 ⦁ ただし、対象者が少ないため統計検定の結果は有意でない。(*100人程度の被験者が必要。)

(11)文章に対する「印象評価」の結果


(12)実験調査結果に基づく今後の課題
 ⦁ 「キーボード入力」に関する結果を考察するに、大学生の場合は、小学生用の文章において、PCの漢字変換機能が
  邪魔をして、ひらがなで再入力せざるを得なくなり時間を要した可能性があるのではないか。
 ⦁ 「①」だとしても、「読みの時間に影響を与えるとは考えられない。」
 ⦁ 「手書き」のほうが「キーボード入力」よりも入力(書字)に時間がかかったということは、「対象を見ている
  時間が長い」ということであり、音読速度の流暢性を促進した可能性があるのではないか。

4 今後の展望
  本稿で示した調査研究(「予備実験」)は、以下のような「本実験」の実施を予定したものであった。
対象:55名ほどの小学2年生(ひらがな読み書きが担保されている低学年)とその保護者
 (対応のあるt検定, d=0.4までα=0.05, β=0.8で計算し、それより少し多めに)
メインターゲット
 ・文の入力と音読課題(入力速度と音読速度)
  ※文の入力を2条件に分ける(手書き条件と入力条件)
(補助的な検査)
子どもの基礎情報に関する行動検査(20分程度)
 ・50音の読み正確性(ひらがな1字の読みが可能であることの担保)
 ・PVT-R(語彙年齢の測定、受容語彙ひいては認知発達のおおよその指標)
 ・非語速読検査(全般的な文字-音の変換効率の指標, 読み困難の検出)
   ※時間があれば検討できればよいもの:数唱課題など記憶検査
保護者への質問紙
 ・子ども生活習慣(食事(朝食欠食頻度, 主食, 偏食), 睡眠(起床, 入眠時間))
 ・家庭にある電子端末(数,子どもが利用可能かどうか)と子どもの利用状況(1日あたりの使用時間)
 ・親社会経済状況(最終学歴、年収)
  ※時間がれば検討できればよいもの:CBCL(子供に行動/精神的な問題がないかの担保)
 本稿は、「本実験」に至るための「予備実験」の段階を記述したものである。ただ、「手書きすることは電子端末上での文字入力よりも読みに良い影響があるのか。」という課題意識に対しては、「結果の一貫性、効果量から、「キーボード入力した文章よりも手書きをした文章で読み速度があがる」という仮説に沿った結果が得られたといえる。」ことから、この方向での「本実験」の必要性を示唆していると捉えている。また、「(12)実験調査結果に基づく今後の課題」の「(ウ)「手書き」のほうが「キーボード入力」よりも入力(書字)に時間がかかったということは、「対象を見ている時間が長い」ということであり、音読速度の流暢性を促進した可能性があるのではないか。」という点は、Writing Modalityの差異を考察する視点としての「時間・身体・過程」の重要性も示唆していると捉えている。
 本「予備実験」によって得られた知見に基づきながら、今後は、「本実験」の実施をめざしたい。その上で、「研究構想」に示した「①小学校低学年の教育課程において手書きの必要性を認識しつつあるノルウェー並びに手書きをやめたフィンランドの動向」を引き続き調査すること、「② 日本の小学生、中学生及び大学生のデジタル使用歴並びに現習慣と認知能力及び脳活動との関係を調査する。いわゆるデジタルネイティブとそうでない者との比較観察を行う。」こと、「③ 前項①②を踏まえて、自身の手で書く力とデジタルツールで書く力のそれぞれを育み、適宜、切り替えることができる力を育成するための課題」の析出につなげていきたい。

【参考文献】
  ⦁ The effects of handwriting experience on functional brain development in preliterate children. Trends in
   Neuroscience &Education.(2012) KarinH.James, LauraEngelhardta Psychological and Brain Sciences,
   Indiana University, Bloomington, IN47401, United States b Columbia University, United States
  ⦁ Handwriting or Typewriting? The Influence of Pen or Keyboard-Based Writing Training on Reading and
   Writing Performance in Preschool Children. Markus Kiefer , Stefanie Schuler , Carmen Mayer , Natalie
   M. Trumpp , Katrin Hille , and Steffi Sachse , Advances in Cognitive Psychology, 2015 • volume 11(4)
   • 136-146
  ⦁ Paper Notebooks vs. Mobile Devices: Brain Activation Differences During Memory Retrieval
   Frontiers in Behavioral Neuroscience, March 2021,Volume 15.
  梅島 啓太1 、茨木拓也2 、山崎貴裕2、L.酒井国芳1 *( 1東京大学大学院総合文化研究科基礎科学専攻、
  東京、2NTTデータ 株式会社経営コンサルティング研究所、東京 )



おわりに

 本科研は、2000年頃から抱き始めていたデジタルツールが手記手段として一般的になりつつ社会においては(学校教育における学習ツールとしてもデジタルツールが積極的に導入され始めている状況において)子どもの能力の発達に何らかの影響が出るのではないかという疑問を土台に、特に言葉に関する諸能力の発達に現れる影響を実証的に明らかにしようとする課題意識に基づいている。
 1年目は、直近の共同研究である「世界標準のLiteracy育成プログラム開発のための基礎研究-時間・身体・過程-」(JSPS科研費JP18K02646、2018年度~2020年度)を土台としつつ、関連する国内外の研究成果に学びながら、脳科学的な研究手法も活用しながらWriting Modality(書記手段)が「書く能力」に与える影響を明らかにしようと試みた。しかしながら、特に書記された文章をどのように評価するのかという評価指標の作手の難しさを実感せざるを得ない中で、研究の方向性を模索し続ける結果となった。
 2年目には、何とか実証的な研究データを具現化できるような研究活動の推進を模索した。研究過程で、タブレットを積極的に活用しキーボード入力・フリック入力によって「ひらがな」を書記させている指導者と手書き学習の必要性を重視して引き続き手書きによる「ひらがな」学習を推進していこうとする指導者の実態が報告された。同時に、キーボード入力・フリック入力で「ひらがな」を書記させている小学校1・2年生の中には、書記した文章を音読する際に、ひとまとまりの「ことば」として音読するのではなく一音ずつを辿って読む「たどり読み」や一音ずつを拾って読む「ひろい読み」をする児童がいるという報告もなされ、この原因が手書きで発達するはずの図形認識力や身体運動能力が鍛えられにくいことからくる図形的再認能力の未発達に由来する可能性が指摘された。これを受けて、これらの点に関する脳科学的な視点からの調査研究を実施することとなった。ただ、この時期は、新型コロナウィルスの感染拡大の影響から、報告された「ひらがな」の書記指導に関する指導者の意識調査の実施が困難であると判断し、Writing Modality(書記手段)の違いが書記した文・文章の音読能力に影響を与えるのかどうかを明らかにするための予備的調査として、少人数の大学生や大学院生を被験者にした実験調査の実施を模索した。
 3年目は、2年目の研究活動方針を具現化するために、まず、東北大学の加齢医学研究所の御理解のもと研究同人の松﨑泰氏を中心に、、大学生や大学院生を被験者にした実験調査(Writing Modality<書記手段>の違いが音読に与える影響に関する実験調査)を実施した。その結果、Writing Modality(書記手段)の違いが音読のあり方に影響を及ぼしている可能性があることがデータ的に認められた。<研究発表 「Writing Modalityの差異が読みに与える影響に関する調査研究」 リンク >次に、この予備的実験調査研究の結果を前提にしながら、本科研の課題意識とそれに基づく研究成果の交流、及び模索している研究状況を打開することを目指して、前回の科研から研究協力者であるノルウェーのAnne Mangen教授の紹介を受けてノルウェーのボルダ大学での研究交流と現地調査を実施した。結果として、ボルダ大学の研究者からは、継続的な共同研究の申し出を受けることになった。
 結果として研究過程は模索の連続であった。研究方法以上のような研究過程・研究成果を、本科研では残すことができた。しかしながら、本科研の土台となる課題意識からすれば、実証的な研究成果を提示できているとは言い難い。今後とも、多様な専門の研究者の知見を結集し、研究目的を焦点化したうえで、改めて認知科学や脳科学的な研究手法を活用して、書記手段の差異が読み書き能力を中核とした国語能力の発達にどのような影響を与えるのかを実証的に追究していく必要を強く感じている。そして、この課題に関する実証的なエビデンスを示すことが、子どもの発達段階のどのような場面に手書きやデジタルツールを活用することが教育的効果が高いのかを明らかにしていくことに繋がると考えている。
 最後に、「世界標準のLiteracy育成プログラム開発のための基礎研究-時間・身体・過程-」(JSPS科研費JP18K02646、2018年度~2020年度)で鍵になると考えたファクター(書記に要する時間、書記活動における身体の活用のあり方、書記を行う過程)への着眼は、本科研で取り上げた課題や学校教育におけるデジタルツール活用に関する諸課題を追究するにあたっての不可欠の視点であると考えている。更なる追究をしていく必要を感じている。





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