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書室は、「手書き」に関するホームページ。研究から随想、寄稿まで…

引き出し

感じるがままに、思いつくままに、

2016年3月10日・木曜日
               
 羽衣文具という会社が廃業して、1年。改めて、その会社が製造していた「羽衣チョーク」を惜しむ声が上がっているそうです。

 私がそれを耳にしたのは、1月下旬。浴室で聞いていたラジオのニュースでした。
 スタンフォード大学数学科のBrain Conrad教授を中心としたアメリカの数学者約200人は、羽衣文具の廃業を知って、1トンのチョークを共同購入していたそうです。しかし、ストックが減っていく様子を見て、心がひどく痛むとか。

 海外の数学者の間では、「羽衣チョークで計算ミスをするのは不可能だ」というジョークが生まれるほど、「羽衣チョーク」の評価は絶大だそうです。その理由を、Brain Conrad教授は、「アメリカのチョークはもろく折れやすい。折れたる度に思考が停止し、集中が持続できない。」と言っています。
 つまり、書き味が気に入っているということです。パソコンのソフトのように、大事な時に、不具合を起こさないですしね。

 最先端の理論研究(脳)を支えているのは、手と、手に生えたように使える道具だったということに、私は愉快な気持ちになりました。

 過日、『ノートや鉛筆が学校を変えた』を久しぶりに読み返していて、「鉛筆とノートと謄写版印刷とが生活綴り方運動を生み出した」という趣旨が書かれていたことを発見しました。
 その顕著な事例として、1920年代後半から30年代にかけて花開いた生活綴り方を挙げることができる。毛筆と和紙とが主流であった時代には、たとえ子どもの内面を解放しなければならないと感じた教員がいたとしても、それを「綴り方」によって実現しうる可能性はなかったといえる。毛筆と和紙とを用いて「感じるまま」「思うがまま」を素直に表現することは、毛筆の使用に熟達した一定年齢層以上で、かつ既成の思考枠に囚われることの少ない独創性をすでに備えた人々のみがよくなしえたことだったといえよう。小学生の多くが容易になしうることではなかった。鉛筆とそれにふさわしい洋更紙が、子どもに自由な文章表現をなしうる物的条件を提供するのだが、鉛筆画まだ多く輸入品に頼らざるをえなかった間は、その「綴り方」は輸入品の鉛筆を手にしうる大都市近辺の中流階級以上の子どもの世界にとどまっていた。第一次大戦後の、すでに述べたような事情のもとでの低廉な国産鉛筆と国産用更紙の大規模な普及をみたのち、それらの筆記具をようやく入手しえた農山村部の子どもたちを対象に、かれら自身の生活を見つめさせて「感じるまま」「思うがまま」を自由に表現させ、既成の概念枠の束縛から子どもの心を解き放とうとする、「生活綴り方」運動が成り立ちうるようになったと考えられる。

                   佐藤秀夫著『ノートや鉛筆が学校を変えた』(1988年 平凡社)p263〜264

 ということは、パソコンで書く習慣は、何を生み出すのだろうと考えざるをえないのです。 (鈴木)

        


人差し指

○○○○○○○○イメージ2015年6月17日・水曜日
               ◇
 カヴェコ社 ペンシル スペシャル S 0.5

 今月の初めに、知人を通じて、入手しました。アルミのケース付きです。
 クラシックなデザインで、無駄がありません。
 長さ11センチ、重さ15グラム。しっとりした重量を感じる作りです。
               ◇
 左手側にあるのは、パイロット社製の複合ペン。長さ14センチ、重さ30グラム。こちらは、IDカードとともに首から提げて、出席簿の記入や簡単なサインに使っています。
 決め手は、ボディを包んでいる茶色の革の型押しです。IDカードケースの素材と色(オレンジ)に合わせました。
 書き味は、ひと月前から使い始めたせいか、まだ、十分に馴染んでいないところがありますが、決して悪くはありません。
                         ◇
 一方、カヴェコ社ペンシル スペシャルs は、人差し指で書いたことを思い出させてくれる書き味です。砂地に人差し指で書いたことや父の背中に人差し指で書いたことを蘇らせてくれる書き味なのです。
 幼い日を振り返れば、手書きすることは、身体の行為でした。
 身体で感じることでもありました。人差し指を通して感じる摩擦。人差し指の動いた軌跡や時間。手書きすることは、摩擦、軌跡、時間等を身体に感じさせることだったように思えます。
                         ◇
 それからおよそ50年を経て、私が選んだ一品は、身体で感じることより、社会的意味合いを優先させたものだったわけです。
 どちらも、今の私にとって、大事な要素です。 (鈴木)

アートドットの鉛筆

○○○○○○○○イメージ2015年4月22日・水曜日
                ◇
 リラ社グルーブ

 私は、小学校教諭の資格を取得するために必修の授業科目「小学校書写」(1年生対象)を担当しています。
 平成27年度「小学校書写」は、明日で、3回目となります。
                ◇
 明日、必ず持ってきなさいと、受講生に指示したものがあります。それは、アートドットのデザインが素敵なドイツ・リラ社製の鉛筆です。やや太めの三角軸に、書字する際の指位置が円形の彫りによってマークされています。それは、まるで、経路のツボのように、よく効きます。
                ◇
 たとえば、受講生は、上部写真のように、筆記具を「握って」、書字しています。160人の受講生のうち、このようなフォームは、およそ4割。
 外に、親指を突き出した拳骨で握っているフォームが5割。さらに、人差し指と中指の2本を、鉛筆の軸にのせているフォームが0.8割。残りの0.2割が、辛うじて、教科書に掲載されているようなモデルのフォームです。
 つまり、ほとんどの受講生が、見た目も格好悪く、肩が凝ったり、手が痛くなったりするフォームなのです。このようなフォームでは、とても強い力が、手指、腕、肩及び筆記具にかかっています。万年筆を使って、このフォームで書字したら、ペン先が壊れてしまいます。
 これでは、手書きがいやになりますね。
                        ◇
 そこで、「小学校書写」では、楽に、書字できるフォームを指導します。そのために、指定しているのが、リラ社の鉛筆です。ドイツの子どもは、これを使って、望ましい書字フォームを身につけるとか。
                        ◇
 どうしても、拳骨書字をやめられない受講生には、ピンポン玉状の補助具(下部写真右)を併用させます。
 また、下部写真中央にあるシャープペンシル〔※〕は、フォーム定着のために指定しています。他の授業科目での筆記時に、使わせます。
 〔※ アートドットの鉛筆より、やや太い三角軸。日本・OHTO社製。〕
                        ◇
 書字は、知的な習慣と深く結びついています。だから、書字が好きになることは、知的習慣への近道だと、受講生に話しています。(鈴木)



学生たちに、万年筆を使わせてみました

2015年4月12日・日曜日
                      ◇
 子ども用万年筆(ドイツ製・日本製)
                
 前期に開講している授業科目に「中等書写法」(2年生対象)があります。この科目は選択ですので、受講しているのは、比較的、手書きに関心が高い者たちです。例年、7月頃に実施する最終単元では、小筆を使って、「百人一首カレンダー」を作らせています。
 今年は、もっと「百人一首」自体への理解を深めてから、カレンダー作りに移行したいと思っています。そこで、授業外の時間に、「百人一首」の視写を課すこととしました。道具は、原稿用紙と万年筆です。その導入を、「中等書写法」の第2回に行いました。
                      ◇
 受講生14名のうち、万年筆を1度も使ったことのない者が11名いました。使ったことのある学生でも、試し書き程度だそうです。
                      ◇
  来週からは、家庭で死蔵されている万年筆を発掘してくるか、これを契機に気に入った万年筆を購入するか、しましょうと話しました。
 そこで、私の手元にある子ども用の万年筆を使わせてみました。
○○○○○○○○イメージ
 次のようなラインナップです。
 ■写真右の2本:
    ドイツLAMY社の「abc」(青キャップ)、同社「サファリ」(ピンク)
 ■写真右から2つめの群[3本]:
    ドイツPELIKAN社の「ジュニア」(緑、紺)、同社「ツイスト」(水)
 ■写真左から2本目:
    ドイツFABER-CASTELL社の「スクール用」
 ■写真最左:
    日本パイロット社の「ペン習字ペン」(透明)[「カクノ」でなくて、
    すみません。

 インクも、ブラック、ブルー、及びブルーブラックのうち、どれが自分の文字を引き立てるか、よく観察して決めましょうと。
                      ◇
 この日の授業記録に、学生は、次のように記述していました。
 今日の講義では、さまざまな万年筆で文を書いていったが、意外にも500円の万年筆が一番安定して書くことができた。左手で書いたため、少し勝手が違ったのかもしれないが。自分で買うときは、是非、左利き用の万年筆を買って書いてみたい。

 今日は、人生で初めて、万年筆をしっかり使いました。幼い頃に少しだけ触った程度だったので、とても難しく、慣れるのに時間がかかりました。いくつか試した中で、私はペリカンのジュニアが最も書きやすかったです。 また、鉛筆の持ち方や書き方、姿勢に少し癖があるので、そこを含めて慣れていきたいです。

 今日は、万年筆の説明を受けた後、実際に万年筆を用いながら、文章を書いてみました。万年筆を使うと、自然に、正しい持ち方になって書くことができました。私は、濃い青の色が文字に映えるような気がしたので、LAMYがいいなと思いました。

  「中等書写法」第2回では、学生たちを「書く生活」に導く仕事が始まったという実感を得ました。(鈴木)

ゴッホを偲んで

○○○○○○○○イメージ2015年3月9日・月曜日
                ◇
 ファーバー・カステル製ペンシル

 熊野町で城本社長に、ファーバー・カステル社製の2Bの鉛筆をいただいてしまいました。赤色のボディのが、それです。日本では、手に入らない品です。
 私が持っているのは、ボディがシルバーのもの(芯はH)だったのです。ゴッホが使っていたという鉛筆ですが、芯はHではなかったとはずだと推測しています。
 現代では、カール・ラガー・フェルドも、「インスピレーションを与えてくれる」として、愛用しているとか。
                ◇
 つい、城本社長に見せられた時に「いただけますか?」と言ってしまいました。「喉から手が出た」というのは、このことだと思います。
 城本社長は、潔く、「どうぞ。」と言ってくださいました。
 2月中旬、フランクフルトで開催された伝統工芸展に行かれた時に、市内の文具店を巡って、購入したのだそうです。大切な品なのに、すみません。
                ◇
 熊野からの帰途、新幹線に乗る前に、ひろしま美術館で、ゴッホの「ドービニーの庭」を鑑賞しました。
 ゴッホの絶筆と言われるこの絵。この絵の下絵も、ファーバー・カステルのペンシルで描いたのでしょうか。
                                   ◇
 私は、数数のストーリーをまとったファーバー・カステル社製のペンシルが大好きです。鉛筆と同じ感触で使えるシャープペンシルを愛用しています。 (鈴木)


相性

○○○○○○○○イメージ2015年2月23日・月曜日
                ◇
 伊東屋特撰 便箋

 書いていて気持ちがよい時があります。それは、筆記具と紙との相性が合っている時です。相性には、書く速さや圧も関係しますが、決めては、筆記具と紙との関係です。
 私の場合、40年近く愛用したプラチナ18金の万年筆を基準にして、書いていて気持ちがよい紙を持っています。
 便箋なら、伊東屋特撰のものです。薄茶色や薄紺色の枠取りがあるもの、罫だけのもの(写真参照)など、何種類か買い置きをしています。
 これらに、愛用の万年筆で書くと、気持ちよいです。ペン先と紙面との間に生じる摩擦が心地よいです。文字面も、適度にこなれた雰囲気に見せてくれるます。
 だから、気持ちが和んできます。だから、手紙を書いてよかったと感じます。
                ◇
 指定された用紙に書くときは、どうにもならないから、その用紙に合わせて書く手を調節します。これだと、身体が緊張してきます。
                ◇
 新しい万年筆にも、相性のよい紙を見つけないといけません。
 買い置きしている伊東屋特撰の便箋では、ないようです。(鈴木)


    

ブライドテイスティング

○○○○○○○○イメージ2015年2月23日・月曜日
                   ◇
 満寿屋製 一筆箋

 書き味で紙を捜していると、伊東屋特撰の便箋と同じ感触の紙が見つかりました。
 満寿屋の原稿用紙です。
 写真のように、一筆箋のように使えるものを何種類か常用しています。大急ぎで、郵便を送りたい時に、添え状のようにして使います。とても重宝しています。
 急いで書いているのに、書き心地がよいから、気持ちが落ち着いてくるような気がします。
                   ◇
 ある時、伊東屋特撰の便箋は、満寿屋さんが作っていることを知りました。
 ああ、そうだったの、道理で同じ書き味、と利き酒をしたような気分になりました。(鈴木)

新しい万年筆


○○○○○○○○イメージ2015年2月13日・金曜日
      ◇
 プラチナ製「プレジデント ブルー」(F)

 やっと手に入れることができました。
 限定品だったのでメーカーにも在庫がなく、石丸文行堂の常務に、全国の小売店を捜し回っていただきました。
      ◇
 やはり、私は、プラチナの書き味が好きです。今も、高校に進学するときにお祝いにいただいたプラチナ18金の万年筆を使っています。
○○○○○○○○イメージ 私の脳の回転速度に、影のように寄り添って、言葉を紡ぎ出してくれるからです。もちろん、文字のルックスも非常に良い状態に見せてくれます。
 しかし、ボディーにヒビが入ってしまったので、いつだめになるか心配でしかたありません。
 ですから、ここ数年は、代わりになるような万年筆をいろいろ試していました。
                  ◇
 その一つが、2年前に購入したパーカー製「プリミエ モノクロームエディション ブラック」(M)です。
 これもかなり吟味したはずでしたが、日本語の文字を縦書きする場合には、すこし不満が残ります。それから日本製の便箋とは、相性が良くないようです。
 そこで、再び、万年筆捜しが始まりました。
                  ◇
 「メトロポリタン」と書いてみました。(このカバはUSBです。メトロポリタン美術館のミュージアムショップで購入しました。)
 上の太い文字が「プリミエ モノクロームエディション ブラック」(M)で書いたもので、下の細い文字が「プレジデント ブルー」(F)で書いたものです。
 まだまだ、「プレジデント ブルー」(F)の書き味は、「硬い」です。
 根気よく、私の、手と脳と、仲良くなれるように馴らしていきたいと思っています。(鈴木)


朱書き必携

○○○○○○○○イメージ2015年1月6日・火曜日
      ◇
 パイロット製「COLOR ENO 0.7」

 学生の論文の添削、答案の採点、自分が書いた文章の校正には、必ずこれを使います。
 2箱ぐらい購入して、見当たらないことがないようにしています。
 研究室にも、自宅にも、置いています。すべてのバッグに入れて、持ち歩いています。移動の時にも手放しません。
                           ◇
 替え芯も、パイロット純正を使っています。これは、消しゴムで綺麗に消すことができるからです。他社製の替え芯を使ったことがありましたが、ボディの中で滑って、うまく筆記できませんでした。
「COLOR ENO 0.7」は、私が一番頻繁に使う筆記具です。
                           ◇
 滑らかで、気持ちよく書けます。軽くも、しっかりも、書きたいように書けます。
 パイロット社からは、消せるボールペンも出ています。それを試したことはありますが、私の場合、「朱書き」は、これに限ります。(鈴木)





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