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「手書き」に関するHPです。研究から随想、エピソードまで…。

世界標準のLiteracy育成プログラム開発のための基礎研究 - 時間・身体・過程 -


5 調査報告
(1) ノルウェー スタヴァンゲル大学マンゲン教授らとの意見交換の概要
  

[日程]
2019年8/18(日)[日本時間]
 00:10 発のNH203便で羽田空港からフランクフルト空港へ
 フランクフルト空港でトランジットして、オスロ空港へ
 オスロ空港でトランジットして、スタヴァンゲル空港へ、スタヴァンゲル泊

2019年8/18(日)[現地時間]
 スタバンゲル大学にて、マンゲン教授ら執筆のレビューペーパー
 「Pen or Keyboard in beginning Writing instruction? Sonme perspectives from embodied cogniton」
 に基づく意見交換
         
 Abstract
Reading and writing are increasingly digitized at all levels of education, and in beginning writing instruction, children are often introduced to writing by using keyboards rather than by pen-and-paper handwriting. The short-term and long-term cognitive, educational and socio-cultural implications of such a transition are largely unknown. In this article, we discuss some urgent questions relating to the ongoing marginalization of handwriting. By reference to extant research particularly addressing the motor component of writing, and drawing on key theoretical insights of embodied cognition, we address the role of the material affordances and sensorimotor contingencies of keyboards and handwriting implements in the development of basic writing skills.
 本チームの調査報告
 「The Effect of Writing Tool on Student Writing」と質疑応答
                               PowerpointをPDFにしました。
 列席者:                                          
  Mary G. Billington, Associate professor, The Reading Centre, University of Stavanger, NO
  Vibeke Ronneberg, Associate professor, The Reading Centre, University of Stavanger, NO
  Camilla Fitjar, Ph.D. student, The Reading Centre, University of Stavanger, NO
  Natalia Kucirkova, Professor, The Centre for Learning Environment, University of Stavanger, NO
  Anne Mangen, Professor, The Reading Centre, University of Stavanger, NO
  千々岩弘一(鹿児島国際大学教授)、
  鈴木慶子(長崎大学教授)、
  劉卿美(長崎大学教授)、
  長岡由記(滋賀大学准教授)

2019年8/19(月)[現地時間]
 スタヴァンゲル大学にて、
 ロネバーグ准教授によるDigiHandプロジェクト中間報告と意見交換
 列席者:
  Vibeke Ronneberg, Associate professor, The Reading Centre, University of Stavanger, NO
  Anne Mangen, Professor, The Reading Centre, University of Stavanger, NO
  千々岩弘一(鹿児島国際大学教授)、
  鈴木慶子(長崎大学教授)、
  劉卿美(長崎大学教授)、
  長岡由記(滋賀大学准教授)

2019年8/20(火)[現地時間]
 スタヴァンゲル大学見学、資料閲覧。スタヴァンゲル泊。

2019年8/21(水)[現地時間]
 スタヴァンゲル空港からオスロ空港へ、
 オスロ空港からオスロ市内へ移動。オスロ泊。

2019年8/22(木) [現地時間]
 オスロ大学にて、講堂等の見学、及び資料閲覧。オスロ泊。

2019年8/23(金) [現地時間]
 オスロ空港発6:05発のLH865でフランクフルト空港へ
 フランクフルト空港から羽田空港へ

2019年8/24(土) [日本時間]
 羽田空港着9:50着。羽田空港からそれぞれの勤務地へ。


 日時  セッション 備考 
 2019.8.18 10:30~ [1] レビューペーパーに基づく意見交換 会議室 
 2019.8.18 11:30~ [2] 情報交換[割愛]  レンチルーム
 2019.8.18 12:30~ [3] 当方の調査報告と意見交換  会議室
 2019.8.18 14:00~ [4]マンゲン教授からの
   リーチデザインに関するアドバイス[割愛]
 カフェ
 2019.8.19 11:30~ [5] 情報交換[割愛]  ランチルーム
 2019.8.19 12:00~ [6] DigiHandプロジェクト中間報告と意見交換 ランチミーティング室 
  以下には、上表の青字の[1][3][6]のハイライト部分を記述します。

[1]Anne Mangen教授ら執筆によるレビューペーパに基づくー意見交換[摘要]
  「Pen or keyboard in beginning writing instruction? Someperspectives from embodied cognition」(2016)

 認知心理学的研究、教育学的研究、社会文化的研究、脳神経学的研究らを見渡して  
 ①「Pen or keyboard in beginning writing instruction? Someperspectives from embodied.」にはある現状
  把握は、下記の通り。私たちチームも同様です。
   読み書きは、あらゆるレベルの教育でますますデジタル化されている。書くことの初期の指導で、子どもたちは、
  紙とペンを用いた手書きではなく、キーボードによって書くことに慣れている。しかし、紙とペンからキーボード
  への移行の短期的及び長期的な、認知的や教育的、社会文化的な影響は、ほとんど知られていない。
 ②「embodied cognition」(身体的認知)が重要な意味を持つと考えます。
 ③教育学の分野には心理学や脳神経心理学の観点から見た、「書くことの機能についての認識」研究が乏しいと把握
  しています。
 ④キーボードの導入によって突如として書くプロセスや運動機能の部分が大きく変わってしまいました。これからは
  心理学、神経科学、教育学を統合した観点から見る必要があると思います。
 ⑤この分野に興味を持ったのは博士論文でリーディングの研究をした時です。読む時に、手や指を使うことに関心が
  ありました。紙の本を持ってページをめくるのと、ノートパソコンは持って操作する感じが違います。
 
     
     Mangen教授の了解を得て、写真とロゴを掲載しています。

 手書きVSデジタルの書字
 ①日本では、この分野の研究者は少数です。日本では、長い間手書き教育を重視してきたわりにICTへの傾斜が早い
  気がしています。
 ②ノルウェーやヨーロッパでは、手書きとキーボードの比較研究は、ポピュラーになって来ています。その理由は、
  ノルウェーではデジタル化が進んでいて、小学校1年生からキーボードを使って書くことを学んでいる生徒もいま
  す。デジタル技術の密度に関して、ノルウェーは世界のトップです。多額の投資がされていますし、政策面で、特
  に iPadを学校に積極的に導入しています。次に、先生たち自身が書く過程が(以前と)異なることに気付いてい
  ます。そこで多くの人が、この違いは何を意味するのかと感じています。その結果、このトッピクへの関心が増え
  て研究も盛んになりました。
 ③International Graphnomics Society(https://graphonomics.net/)。これが、この分野の研究が発表される最大
  の学会(Scientific Society)。この学会の研究者は、手書きと関連技術に関する根本的な研究や応用研究、つまり、
  書く時に用いられる
 ④併せて、「Modes of writing in a digital age: The good, the bad and the unknown」(2018)を参照するとよい
  です。https://firstmonday.org/ojs/index.php/fm/article/view/9419

          
            スタヴァンゲル大学リーディングセンターの廊下

[3]千々岩ら研究報告
   「執筆ツールによるレポートの質に関する調査」に基づく意見交換[摘要]


                                 Powerpointを材料にしました。
 口頭発表と意見交換
 ①作文の判断基準を、どうやって作りましたか?
 ②私たちは3人の採点官を選びました。1人は日本語専攻の学生、後の2人は小学校の先生です。二番目の評価方法は
  主観法です。合計3名の退職した日本語教師と高校の教師に「論理性」と「説得力」の2つの判断基準を与えまし
  た。しかし、それぞれの判断基準の詳細は与えませんでした。基本的に採点官の個人的な主観に従って小論文に「
  劣っている」から「非常に良い」までの点を付けます。それで、この方法を主観法と呼んでいます。
 ③この方法が大学生の小論文を通常評価する方法ですか?点数を付ける時に用いる典型的な判断基準ですか。
 ④そうです。
 ⑤小論文の題目も頻繁に出題されるものですか?
 ⑥それは違います。学生に自分の意見を述べて欲しかったので、この題目になりました。基本的には経験に基づいて
  います。約80名の大学生に来てもらい、3つのグループに分けました。過半数の参加者は大学1年生でしたが、2、
  3、4年生もいました。これがルーブリック法と主観法で評価した結果です。ルーブリック法では、評価基準と使用
  した筆記用具の間に強い関連は見られませんでした。
 ⑦一つだけ言えるのは、キーボードを用いた場合は特に議論の鮮明さの点で他の筆記具より劣っていました。学生が
  キーボードを用いて書いた小論文はルーブリック法で低い評価を得ましたが、その理由は分かりません。
 ⑧ここからは主観法による評価です。ここでも大きな数字は見られませんでした。つまり「論理性」や「説得力」と
  筆記用具の関連性は見られませでした。

          
 
 今後の課題
 ①将来に残された課題です。第1に、私たちは小論文の質を評価しようとしましたが、これは困難だったかも知れま
  せん。小論文の質の定義自体が難しいことがデータの解析を困難にしているのではないかと考えています。
 ②第2に、新たな参加者を用い、創造性を新たな評価基準として加えて実験を行うことを考えています。3人の評価
  者も選び直します。以上が私たちのこれまでの研究内容です。

          


 独創性、創造性
 ①これから行うという独創性についてはどう定義しますか?
 ②アイディアがいくつ出るかとか。数と質で、両方。
 ③独創性に関して、別のトピックで小論文を書かせる予定です。
 ④私は同一の学生に異なった筆記用具で小論文を書かせるのもおもしろいかと思います。
 ⑤その方が実験のコントロールとしては良いでしょう。
 ⑥学生に好みの筆記用具を尋ねましたが、この点が独創性に影響しているとは考えていませんか?
 ⑦これは新しく書いたのですが、「キーボード入力とかフリッカー入力は考える時間を極端に短くしたり理解したり
  する過程が著しく省略される」のだと観察しています。

          
               リーディングセンター内ラウンジ

 ⑧なぜ、フリッカー入力だとアイディアが限定されますか?それは、興味深いです。
  フリッカー入力ができるのはiPhone だけで、他のデバイスでは?この小さなスクリーンだけですか?
 ⑨これはメッセージ専用ですか。日本の学生はノートを取る時にも使いますか?
 ⑩それでは、日本の学生がノートを取る時にフリッカー入力を使いますか?
 ⑪使っている子もいます。大学も小学校も中学校も大体は手書きです。
 ⑫先ほど私たちに示したようにキーボードでは変換してから一つの選択肢を選択します。フリッカー入力でも一つの
  キーを押してから選択します。どちらでも、書くのに長い時間がかかります。私たちがキーボードで入力する時は
  一文字を一度に打てるので(変換する必要がないので)より早く入力できます。 「選択する」行為を見た時に、
  ノルウェーの学習障害児用のコンピュータのプログラムを思い出しました。単語を入力して表示される選択肢の中
  から正しいものを選択しなければなりません。

          

 ⑬私は3点あります。まず、フリッカー入力に魅了されました。創造性のことで、説明の中では「手書きの方が時間
  がかかるから創造性が発揮される」とありましたが、多くのキーボードの研究では「速く書ける方が創造性が高ま
  る」という結果が報告されています。そこで私はどこでストップして考えて、どこで書くかが重要ではないかと思
  っています。
  第2点です。皆さんは学生をグループA、グループB、グループC、と分けて手書き、キーボード、フリッカー入力
  を個別のグループに入れました。もしも手書きのグループの全員が創造的でない場合に、その理由は手書きしてい
  るからか、または、そのグループの学生が単にそうなのか分かりますか?
  最後に第3点は創造性です。私も同種のプロジェクトで創造性の話をしましたが、何が創造性なのかを決めること
  が困難でした。皆さんはどのようにして創造性を見つけようとしていますか?私たちは創造性の一部は語彙、つま
  り使用する単語のバリエーションがどの程度大きいか、異なった単語を使用するかだと思います。しかし、創造性
  を測る他の良い方法があれば知りたいです。
 ⑭私は大阪の幼稚園を訪問したことがあります。そこの先生が子供の空間運動の観点から同様の議論をしました。何
  と言ったらよいか…。創造性の身体表現が日本では尊重されていました。私たちが話し合ったのは、テクノロジー
  が関係して来ると、時間だけでは無く好みが関わってくる点です。多様なテクノロジーのある家庭で育った子供は
  それらを素早く使うだけでなく、好んで使うと幼稚園先生たちが考えているように思えました。従って、創造性の
  表現が異なると言えば良いのかも知れません。
 ⑮私の2番目の質問は。キーを押す時間を全て記録した研究では、単語一語をゆっくり入力したテキストは多くの場
  合に質が悪かった。学生が素早く入力して、次の文や段落を入力する前にストップして考えた場合にはテキストの
  質が多くの場合に良かった。しかし、ですね。えーと、研究者の氏名を思い出せなのですが、どこかに書いてある
  と思いますが…、ある研究で優秀なライターでキーボード入力が上手な人間にタイプ入力の速度を恣意的に遅くさ
  せた場合には、より生き生きとした語彙が用いられました。皆さんの「ゆっくり入力した方が創造性が発揮される」
  と同様なのかも知れません。
 ⑯優秀なライターですか?
 ⑰そうです。キーボード入力が上手な。この研究ではコンピュータに仕掛けをして入力の速度が上がらないようにし
  たところ、用いられた語彙がより鮮明でした。
  私は皆さんが手書きから得る結果に非常に関心があります。私は裏付ける理論について読んだことがありませんが
  私の感覚では、独創的になりたい時には、自分なら紙とペンを取り上げるでしょう。
 ⑱創造性の研究者で、最も著名なのは英国のアンナ・クラフト氏です。彼女は創造性を possibility thinking (可能性
  を考えること)と定義しています。そして彼女は小文字のcで始まるcreativity(小さな創造性)を毎日の創造性と呼
  び、私たち人類は皆が生き残るために創造性を発揮していると語っています。彼女が語る、もう一つの創造性は大
  文字のCで始まるCreativity(大きな創造性)で、これは天からの贈り物であり、一部の人が他の人よりも多く持っ
  ています。違いが分かりますか。
 ⑲ノーです。
 ⑳アンナ・クラフトについて調べると参考になると思います。 Possibility thinking。

          

 電子辞書
 ①ペーパーディクショナリーを使う時は、一杯こうページを繰ったり、索引を調べたりという時間をかけますね。と
  ころが電子辞書は必要なワードを打ち込めばボタン一つでパッと、こう調べられる。
 ②例えば、書類があるとします。小さな辞書には少量の情報が、大きな辞書には大量の情報があります。もう一つの
  方法はGoogle translate です。オンラインの辞書もあります。単語を探すことも出来ますし、それ以上に、用例や
  この単語をこの場合とこの場合に使えるなどの情報を得ることも出来ます。オクスフォード英語辞書もオンライン
  で使えます。多くの情報があります。紙の辞書には、それなりの良さがあります。インターネットの方が効率が良
  いでしょう。もっとも、単語の綴りを学ばなければ使えませんが。
 ③要するに、こうページを繰っている時に頭の中でいろんなことを考えているのではなかってこと。で、電子辞書で
  調べたいことをインプットしてポッとやる時にはあまり考えていない。
 ④しかし、決定的な要因は書く目的やテキストの種類ではないでしょうか?沈思黙考して書く新聞や何かを処理する
  ためのライティングか短時間で無頓着に何か書くか。意思を疎通するための断片的な短いテキストを書く場合には
  おっしゃる時間の問題はあまり重要ではないかも知れません。
 ⑤辞書の例が私はとても気に入りました。同じ内容を2種類の方法で読めますが、頭に残ることは大きく異なってい
  るでしょう。先ほどの3種類の入力法、手書き、キーボード入力、フリッカー入力の話や、あなたが話した手書き
  と創造性について考えていました。テキストの違いは何かと考えると、(他より)個人的なのでは?どうやって調
  べたら良いかはわかりませんが………。(3つの入力法で)もしも、同じ数のアイディアが出たら、手書きの方が
  一つ一つのアイディアを先に発展させて深められるように思います。この点について考えて見るのも良いかも知れ
  ません。
 ⑥質的な研究ですね。
 ⑦大学生の場合は分かりませんし、研究者の名前を覚えていませんが、小学生の生徒に関しての研究で紙の辞書を用
  いた方が「偶然の学習」が多かったと言う結果が報告されています。皆さんが話している「時間」のことは理解で
  きますが、小学校の生徒は時間(に余裕)があると(他の)単語を考えないで、いろいろと別のことを考え始めま
  す。そしてページを捲っているうちに単語に遭遇する「偶然の学習」を行うことがあります。これはオンラインで
  は起こりません。
 ⑧以前、私も高校でスペイン語を教えていました。学生がスペイン語の単語を引く時は辞書の使い方が異なっていま
  す。外国語の為に辞書を用いる場合は、自分の言語の単語を引く場合と目的が大きく異なります。ですから、紙の
  辞書とオンラインのどちらが良いかと尋ねられても答えられません。 辞書の目的は何か、なぜ辞書を使いたいの
  か?スペリングを調べるためですか?単語を探すためですか?
 ⑨ぼくが言いたかったのは辞書をどう言う目的で使うのかって言うよりも、この一つの作業をする時間って言うのが
  ここと繋がって、頭の中の考えるってことと繋がって来るんじゃないかって言う仮説を持っている。で、さっき彼
  女がおっしゃった、そのー、発達段階の小さい子供はね、えー、遊びになるって言うのはなるほどと、だからある
  発達段階の子どもにとって調べる必要があるなと思いました。
 ⑩単語や同義語を理解して辞書を使うならばと思います。

          

 ⑪もう一つ質問して良いですか?クリエーティビティーというかアイディアを出す時にハンドライティングをしてい
  る時の方が、何か全く新しい考えを出す時に自由にアイディアを出す時にハンドライティングをしている時の方が
  アイディアが出てくると言うことは無いですか?アイディアを考える時に鉛筆を動かしませんか?ハンドライティ
  ングしませんか?
 ⑫ドローイング?
 ⑬私だったらドローイングするかも知れないですね。新しい題材だったら紙の上に描いてみるでしょう。でも、アイ
  ディアを展開したり書き上げたりするにはキーボードが必要です。戻って、変更したり推敲したりできますから。
 ⑭長い間、私は半ページ以上のものを手書きしていません。書類を書くときは。どなたか、書類を手書きする方はお
  られますか?
 ⑮「初めに」の部分は手書きするかも知れません。
 ⑯私は絶対にしません。
 ⑰私だったら論文執筆のどの段階かによります。素早く何かを作成するには。えーと、私は紙に書く方が多いかも知
  れません。

            

 ⑱ブレーンストーミングするなら黄色いポストイット(付箋)に書いて、新しい考 えが出たら貼って行きます。紙
  に書いている時に、間違えた場所に書くと、取り除けないため、最初から書き直さなければいけないからです。マ
  インドマップを使うと何度も繰り返すことになるので、ポストイットの方が私には向いています。書くこともでき
  るし、移動することもできるからです。コンピュータに入力すると、そこに残りますが、私は壁に貼りたいです。
 ⑲私は沢山話しをします。自分自身の声を録音して、自動的に記録します。

 家庭学習
 ①日本の小、中学校ではキーボード(入力)で宿題をすることはありませんが、ノルウェーではどうですか?
 ②様々です。キーボードを使う学校も多くありますし、ノートパソコンを持ってきて学校で使ったり、自宅で使って
  宿題をする学生もいます。他の学生はほとんど手書きします。年長の学生はキーボードを使うことが多いと思いま
  す。また、1年生からキーボードかノートパソコンかタブレットを使います。
 ③ここでは地域差が大きいと思います。日本の方が国全体の標準(規格)があるようですが、ノルウェーでは学校や
  学校のオーナーが決めることが多くあります。場合によっては先生が。
 
 子どもの発達と手書き
 ①最後になぜこの研究やっているかって 言うと、子どもが発達していく
  過程のどこかで手を使って書くと言う過程が不可欠なんじゃないかと言
  う思いがある。それを明らかにしたいと思っている。だから、もう、い
  きなりデジタルで文章を作るって所に行っていいのか、どうなのか?
 ②ノルウェーでも、私たちも手書きの将来は分かりません。
 ③どちらか一方になる可能性は少ないと思います。例えば自転車と車の両
  方を持っていても、目的に応じて両方を使い分けるでしょう。
 ④しかし、1年生に書き方を教える時や学習初期の段階では?
 ⑤(手書きとキーボードの)両方ともが貢献する。
 ⑥自由形式の(答えの無い)質問です。5才の子供が将来も手書きを学習
  するか?そう思いますか?
 ⑦手書きを学ぶか、と言うことですか?
 ⑧それだけでなく、初期学習の一部であり続けるか?疑いなく?
 ⑨私の頭の中では、疑う余地はありません。
 ⑩ははは。
 ⑪最低5年は。そう思います。
 ⑫私はわかりません。

[6]DigiHandプロジェクト中間報告と意見交換[摘要]

          
「DigiHand project」は、ノルウエーのFINNUTの助成を受けている。課題番号は273422で、研究期間は2018–2021年である。訪問時のこのセッションでは、当時進行中のプロジェクトに関して、プロジェクトメンバーの一人であるVibeke Ronneberg准教授に説明してもらった。その後の経過も含めて、下記に詳しい。
Siv M. Gamlem, Wenke M. Rogne,Vibeke Ronneberg & Per Henning Uppstad(2020),Study protocol: DigiHand – the emergence of handwriting skills in digital classooms,Nordic Journal of Literacy Research 6,2,25–41.


 この研究を実施するにあたって

    
    Ronneberg准教授の了解を得て、写真を掲載しています。

 ①この研究を実施するにあたって、参加を求めた小学校に「私たちはこうしたいのです。」とは言えませんでした。
  「どのように文字教育を行っているか」を尋ねることしか出来ませんでした。「キーボードだけ」と回答した学
  校を一つのグループに「鉛筆だけ」と回答した学校を別のグループに入れました。そして、両方のミックスの学校
  もありました。
 ②どちらが良いという生徒の好みですか?
 ③違います。小学校の校長が選択します。
 ④デジタルペンで書くこともありますか?ノートを取る時に。
 ⑤いいえ。先生たちに「タブレットを使う時にタッチペンを使いますか?」と尋ねましたが使っていませんでした。
  先生たちはタッチペンを持っていませんでした。
 ⑥昨日皆さんは私に「5年後、10年後に手書きのクラスはあるとおもいますか?」と尋ねました。この研究に参加す
  る小学校を探す時に、この(キーボードだけの)クラスを見つけるのは難しいだろうと思っていましたが、実際は
  簡単でした。手書きだけのクラスを見つける方が困難でした。
  以前は、皆がこちら(手書き)でしたが短期間に変化しました。これからどうなるかは分かりません。
 ⑦現実には先生たちは両方を使っていますね?
 ⑧多くの場合にそうです。
 ⑨一年生から?
 ⑩(考えながら)ええ。しかし、5年前には手書きだけでした。
 ⑪私の個人的な興味ですが、この研究を通してプロジェクトメンバーが小学校の先生に推奨することは何ですか?
  キーボードを先にした方が良いか、手書きを先にした方が良いか。
 ⑫リーディングメジャーから何か重要な結果が得られると思います。一つのグループが、もう一つのグループよりよ
  く読めれば、これは重要だと思います。
 ⑬手書きの方がキーボードより良いですか?
 ⑭まだ分かりません。これから研究で明らかにしたいです。しかしですね、私たちが推奨することに関わらず、皆が
  キーボードを使うでしょう。もしも手書きも重要だと分かれば、先生たちに「初期の段階から両方使って下さい」
  と私たちは伝えます。

          

 ⑮(先生の回答は)完璧です。
 ⑯いつ結果が見られそうですか?
 ⑰そうですねー。ストーリーに関しては、来年の夏ぐらい。博士課程の学生が論文を書かなくてはならないので、急
  ぐ必要があります。
  それから私自身も論文を書いています。一年生の手書きの流暢さを見ています。それから、2年生の初めにストー
  リーを手書きとキーボードで書きます。手書きが上手いこととストーリーをキーボードで書くことに関連性はある
  か? つまり、手書きが上手いことは手書きとキーボード書きの両方の基礎になるか?
 ⑱その結果が出たところで、ぜひ教えて欲しい。
 ⑲論文が出来たら教えて下さい。
 ⑳はい。しかし、私は多くのことをしなければなりません。今まで記録した手書きを整理しなければなりません。文
  字一つ一つを、例えば「これがAの一画目で、これがAの二画目で、これが三画目だと。全ての文字を手作業で私が
  しなければなりません。だから時間がかかります。
 ㉑手で数えるのですね。
 ㉒コンピュータを使いながら。
 ㉓大変だけどよろしくお願いします。ありがとうございました。
 ㉔先生の名刺をいただきましたか?
 ㉕名刺は作っていません。全てディジタルですから。
  (一同、笑い!)                                     〔文責:鈴木〕

        



(2) ノルウエーでの最新研究 -今後の手がかりとして

 ①教室での学習において、タイプライターよりも手書きが重要であること。12歳の子供と若者を対象とした高密度
  脳波研究
  ノルウェー科学技術大学心理学部発達神経科学研究室

 The Importance of Cursive Handwriting Over Typewriting for Learning in the Classroom: A High-Density EEG Study of 12-Year-Old Children and Young Adults
Eva Ose Askvik, F. R. (Ruud) van der Weel, Audrey L. H. van der Meer* (2020).*Developmental Neuroscience Laboratory, Department of Psychology, Norwegian University of Science and Technology, Trondheim, Norway
Frontiers | The Importance of Cursive Handwriting Over Typewriting for Learning in the Classroom: A High-Density EEG Study of 12-Year-Old Children and Young Adults | Psychology (frontiersin.org)

 Frontiers | The Importance of Cursive Handwriting Over Typewriting for Learning in the Classroom: A High-Density EEG Study of 12-Year-Old Children and Young Adults | Psychology (frontiersin.org) →URL


 ②研究プロトコル :DigiHand - デジタルクラスルームでの手書きスキルの出現
  ボルダ大学、スタヴァンゲル大学

  Study protocol: DigiHand – the emergence of handwriting skills in digital classoomsSiv M. Gamlem*, Wenke M. Rogne*,Vibeke Ronneberg** & Per Henning Uppstad**(2020),,Nordic Journal of Literacy Research 6,2,25–41.
*Volda University College   **University of Stavanger

  Study protocol: DigiHand - the emergence of handwriting skills in digital classrooms | Nordic Journal of Literacy Research (nordicliteracy.net) →URL




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